秀光人形工房 (ひな人形、五月人形、日本人形)

遠藤製作所

先代より引き継がれた卓越した技術を更に昇華させ、独自の盛り上げ加工を開拓する。平安の様式美を現代風にアレンジして大ヒット作を立て続けに発表、業界内での知名度を上げる。基本的に全ての工程を自社内でこなし、完全なオリジナル作品を旨としている。大変な勉強家でも知られ、平安から鎌倉時代までの絵画、様式に精通している。

ほとんどの作品は遠藤社長自らの筆によるもので、迫力と気品あふれるその画力は、独自の盛り上げ加工技術と相まって、芸術作品とも言える程の仕上がりと完成度を誇っています。毎年新作を発表し続けるだけの力とアイデアを持ち、才能を余す所なく開花させている。「俺の描いたのが必ず次の年には真似されちゃうんだよなあ。」そう豪快に笑う遠藤社長の目には、業界をリードする自負とリスクを見据える眼力が備わっているようでした。 本金盛り上げ蒔絵を得意とする高級屏風や飾り台等の製造所。特にその圧倒的な画力による迫力あふれる構図と細かな描写に定評があり、その絵をさらに立体的に表現した『本金盛り上げ蒔絵』の技法は、他メーカーの追随を許さないほどに完成されている。屏風や飾り台の製造に特化し、企画から製造まで一貫して行うスタイルを確立。独自性あふれる『形』と『絵柄』には、業界をリードし続けるだけの力量と実績があります。

屏風の良し悪しを決めてしまうほどの重要な作業である下絵を作ります。伝統を重んじ、細かい考証にこだわって練り上げられた構図を基に、時代のニーズを鑑みた迫力ある絵を創造します。この下絵は遠藤社長自らのアイデアと技量が詰まった、まさに節句飾りにふさわしい飾って豪華なバランス感覚を兼ね備えた逸品と言えるでしょう。

下絵が決まったら、その下絵に合った形で型を取ります。これは一枚一枚が手書きな為、柄を合わせたりずれたりしない様にきちんと型を造ります。屏風や台の大きさによって蒔絵を書く大きさや部分が違ってきますので、一番ベストな蒔絵になるように微調整もします。

はじめに本金以外の部分の蒔絵を書き込みます。一番後ろ側になる雲や岩場、川などを描き込み、奥行き感を出します。全体の構図を決める部分なので、しっかりと絵柄を理解した上で彩色していきます。

エアーブラシを使ってぼかしの背景画を入れます。後ろの部分から前の方に向かって、何回もに分けながらぼかしていきます。型を使って入れる部分もありますが、ぼかしはそのほとんどの作業をフリーハンドで入れていきます。自然な風合いが出る反面、蒔絵師の技量も見えてしまう所ですので、慎重にかつ大胆に描き上げていきます。

麻の紐を組んだ物や和紙を設えた物などを下地材に用いる高級な物もあります。素材の表面の風合いを活かしてより味わいあふれる仕様にするものですが、大変手間がかかり出来る量も限られてしまいます。素材の中にはその地方独自の特産物を使うなど、どのような注文にもお答え出来る技術とノウハウが活きています。

乾いては塗り乾いては塗りと、何度も繰り返して下絵を描き込んでいきます。色の数と描き込まれる部分の数で工数が変わりますが、やはり何層も上塗り加工されていくほうが高級感や奥行き感が出てきます。後に行くほど細かく難しい作業になりますが、まさに職人の技が現れる部分になります。

本金を下絵の上に貼り付ける時に使う接着材を造ります。本金は非常にデリケートな性格を持ち、処置の仕方によっては変色やはがれが起き易い素材ともいえます。本金本来の輝きをそのままに、永くきれいに飾って頂けるように創意工夫したオリジナルの接着材を使用します。施工する日の湿度や温度、季節によって変わりゆく条件を加味し、長年の経験と感覚で調合して造り上げます。この接着材自体の出来でも最終的に見栄えが変わってしまう事もあるので、常に気の抜けない作業になっています。

下地を入れた物を刷り込み台にセッティングします。左右や大きさのバランスを見ながら一番きれいに刷り上げられるように、一枚一枚確認しながら刷り込み台にはめていきます。この時ですでに2度目の仕上がりチャックもかねています。

接着材を均等に伸ばしながら刷り込んでいきます。接着材はかなりの粘度がありますので、薄く広く引き延ばしていくのはとても力がいる作業になっています。均等に引くのがとても難しく、この簡単そうに見える作業がとても重要で経験のいる作業なのです。ほとんど1度で決めなければいけないので、この作業の時が一番緊張する瞬間になるようです。

刷り上った上に本金箔を貼り盛り付けます。本金箔はとてもデリケートな生き物のようなもので、その扱いには熟練の技術を要します。ほんのかすかな振動や空気の揺れでもその出来が左右されてしまい、慎重で繊細な作業が求められます。ただ貼り付けていくのではなく、その本金箔の特性と性格を確かめながら、その本金箔を一番活かせるような形で貼り込んでいきます。 ※申し訳ございませんがこの工程の『画像』は公開出来ませんのでご了承下さい。

数種類の筆を使い、一つ一つ確かめながら筆を使って本金を盛り付けていきます。熟練の職人でも一番気を使う作業で、ゆっくりと、しかし確実に描き込んでいきます。一枚ずつの手作業での盛り上げの為数多くの製作は出来ませんが、手作業ならではの風合いや見事な完成度の高さが感じられることでしょう。 ※申し訳ございませんがこの工程の『画像』は公開出来ませんのでご了承下さい。

出来上がった蒔絵の部分をしっかりと乾燥させます。乾燥が弱いと短期間で変色してきたり盛り上げがつぶれてしまう可能性があります。製作した季節や湿気の関係でも異なりますが、最低でも3日から1週間以上はそのままの状態で乾燥させていきます。蒔絵の種類や色使いがあるもの等には、この乾燥を経てもう一度蒔絵し、また乾燥させてもう一度書き上げるなど複数回繰り返して仕上げるものもあります。出来上がるまでには永い日数を要して造り上げます。

完成した蒔絵を『台』や『屏風』に組み立てます。枠やあて板をはめたり、畳や足、ちょう版を付けたりして『台』や『屏風』の形にしていきます。蒔絵はその使われる部分によって向きや仕様、形が細かく決まっていますので、間違わないようにするだけでも大変です。もちろん、この段階で蒔絵の表面に傷が付かないように保護しながら細心の注意を払いながら作業を進めます。

表側を仕上げた後に裏側を仕上げます。紙を貼ったり黒く塗装したりする場合が多いですが、必ず総仕上げ前には裏側を処理します。裏を貼る事により、木材そのもののそりや乾燥を防ぎ、蒔絵表面の持ちを良くすることが出来ます。表面の蒔絵の種類や使われている材料により裏に何を貼るのかを変えていきます。あまり糊を付け過ぎるとカビの原因になりやすいので、薄く満遍なく塗り広げます。

最後に全ての部分をチェックし検品をします。さまざまな種類と大きさがあるので、間違いがないように細かなサイズまで目を通します。検品し終えたものから梱包用材に包み、壊れたり擦れたりしないようにして箱詰めします。

人形や鎧兜の後ろ側に立てる衝立のような物を『屏風』、飾る物の下に敷いて載せる物を『飾り台』と言います。普段は引き立て役として活躍する部分ですが、そのもの単体でも十分豪華な飾りとして通用するものも多くあります。通常は見逃されやすい部品の一つですが、全体の雰囲気をがらりと変えるだけの威力と魅力がある部品でもあります。金の屏風や色付きの屏風、畳の飾り台や黒塗りの飾り台等、いろいろなバリエーションがありますが、全体の調和とバランスが取れているものが一番素晴らしい組み合わせになると思います。